2020年7月5日(日)に、第1回オンライン研究会が開催されました。当日のご発表の参会記をまとめています。

  • 「マイネーム・プロジェクト」 阿部 志乃 先生(横須賀学院小学校)

「なぜ,外国語教育を行うのか?」との問いに対して、Whyを常に意識して「自立した学習者を育成する」こととし、教室内に外国語の必要性を作るために、横須賀学院小学校では様々なプロジェクト学習を実践されている。今回は2019年度に4年生において実践された「マイネーム・プロジェクト」について、紹介された。本プロジェクトは、総合の時間の探求学習と外国語の学びを連携して「相手や伝え方に対する意識」を育てるための5つの目標と4つのステップを設定されている。ステップ1では【タルタリアン・タブレット】を取り上げて、文字について興味をもたせ、「正解のない問い」に取り組む。次に「名前とは何か?」と問いかけ、児童は教員が用意した変換表とフォニックスの知識を駆使して、世界で一番古い【ヒエログリフ】文字で示された最古のエジプトの王様の名前の名前を解読する。「わかった!」という喜びを実感した子ども達は、「文字」への興味関心を深め、多くの図書やタブレットを使って調べ学習を行う。さらにこれまで調べたことを活かして、i EARNのプロジェクトを参考に、「ネームカード作り」を行った。児童は自然に「どうしたら相手に伝わるか」を考え、英語以外の様々な外国語を使って自分の名前を紹介した。最後にLapbookに自分の学びをポートフォリオとしてまとめ、家庭とも学習内容を共有する。児童は将来外国語を学ぶ「自分なりの目的」を見つけた際に、外国語の学び方を学んだといえる。阿部先生は「なぜ学ぶのか」は学習者一人一人違う。したがって指導者の目的によって教材にバイアスをかけ子どもの活動を制限することに警鐘を鳴らされていた。

(ご発表資料はこちらからご覧いただけます。:https://prezi.com/view/Rr2VdEhJONkkuJJJXIR7/

 

  • 「あらためて考える,小学校外国語の意義」 加藤 拓由 先生(岐阜聖徳学園大学) 

第一部は,小学校外国語(活動)の「目的」について考察した。これまでの外国語(活動)では楽しさや,活動の活発さが注目され,ことばが伝える中身については軽視される傾向があったのではないか。学習指導要領では,言語活動を通して,3つの資質・能力を養うことが明示されており,小学校外国語(活動)の授業でも,伝える目的を明確にした言語活動を考えることが重要になっている。

具体的には,pointing gameの活動において,指導者が行った単語を押さえる「速さ」を競うだけの活動になっていないか熟考する必要がある。例えば,short term memoryを鍛えることが目的であれば,教師の発話を最後まで聞いて,教師が”Go!”と言ってからpointingさせるなどの方法がある。また,速さを競うのが目的にならないように,ペアで同時に指さすことをルールにすると,pointing gameの目的や質が変化する。

第2部は,小学校外国語活動における文字指導について考察した。これまでの日本の英語教育では,丁寧な段階を追った文字指導が積み上げられてきただろうか?ひらがなやカタカナの学習のように,Small Step で段階を踏んだ指導を積み重ねることで,文字に苦手意識を持つ児童も,自信をもって文字を学ぶことができる。

また,アルファベットが書けるようになれば,すぐに句や文を写して書くことができるのではない。自分にとって意味のある内容を音声で充分にやり取りした上で,児童が本当に書いてみたいと思う英語を,少しずつ書くことに慣れさせる必要がある。読み書き指導においても,相手意識や目的意識は非常に重要である。

 

  • 「フィンランド,素顔の教育事情」 淡路 佳昌 先生(大東文化大学)

最初に,フィンランドの分化や国柄,今日のフィンランドでの教育の様子が紹介された。

フィンランドでは,ICTが派手さはないが浸透しており,教員間,家庭との情報共有にITを活用し,個人情報の保護と実用性のバランスを両立させるなど,地に足がついた,理にかなった活用がされていた。

市立小学校での外国語学習では,3年生以上が外国語の必修(今年度からは1,2年生から必修となる)となっており,教員は,それぞれの学年の段階に応じて英語を使い分けて活用しており,英語のコントロール力が高いと評価されていた。学習においては,インプットの量が膨大であること,クラスサイズは多くても20人であり,だいたい13,4人のクラスが一般的である。また,気持ちのコントロールが苦手な子どもなどには,支援員がすぐに対応し気持ちを落ち着かせて学習に戻るなどの指導する教員との連携がスムーズにおKなわれていることが話された。

さらに,教員養成においては,システム化されたカリキュラムが組まれていた。学生は,1年かけて実習を行い,大学の授業を受けながら実習も進めて行くことになり,大学で指導を受けながら実習を行えるというメリットがあった。また,実習は2期生となっており,前期はオーソドックスな指導について,後期は研究課題を持って指導を行っていた。 

フィンランドでは,学習,教育環境が充実しており,教員,児童生徒の教師の拘束時間がゆとりをもって組まれ,代替教員のシステムなど,教員が「心の余裕=work-life balance」をもって日々の教育実践が行われていた。

 

  • 「高校英語のユニバーサルデザイン」 斎藤 理一郎 先生 (太田フレックス高等学校)

 最初に勤務校の生徒の実態から、「高校英語学習の位置づけ」を「生涯学習のスタートライン」とし、生徒の苦手意識、学習の辛さ、一人一人のニーズに対応する授業のユニバーサルデザインを紹介された。

 生徒の実態を知ることから始め、まず【基礎学力の定着】を図るため、英語の音と文字の関係性、単語の指導、辞書引き活動、英文読解(内容理解)を行い、生徒に主体的学習や生涯学習を意識させる。次に【英語で発信する機会】として、スピーチ、英作文、コミュニケーション活動等を設定する。この時に、「安心して取り組める雰囲気づくり」や生徒の「挑戦したい意識」を認めて伸ばすことを心がけておられる。また【活動の目標・学ぶ目的】を掲示し、生徒に見通しを持たせるように持続可能な振り返りとフィードバックを大切にされている。Withコロナ時代の今年度は「振り返りメール」の配信などを行い、生徒と教員の双方向授業を試み、個々のニーズに対応しながら、生徒の主体的に取り組む姿勢を育成する。

 最後に、高校英語のユニバーサルデザインのチェックリストとして、①教員の関わりとして有効な手立て ②教材の見せ方、物の関わりとして有効な手立て ③場の雰囲気の設定として有効な手立て の3つを共有してくださった。