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Q 「アルファベットの読みの困難性,文字を音に変換することの難しさのある生徒が,ペアトークやグループトークの活動を行う際に他の生徒との差が顕著に表れてしまい,本人もつらい思いをしています。現在,カタカナで読み仮名を書くなどの支援しかできていません。どのような支援,配慮,事前の指導が考えられるでしょうか?」
中学校 英語担当教員


A    回答者 英国Ashbrook School Assistant 山下 桂代子 先生

 読むことに困難がある生徒にとって、書かれた単語や文を使ってペアトークやグループトークをするのはかなり大変ですし、そんな生徒を見ている先生もできることはやってあげたいけれど、何をどうしていいかわからずつらいですね。

 今回の質問からは、単純に読みに困難を抱えているが、意味は理解できる、という生徒のようですので、実際に、読むことに困難がある生徒何人かにペアトークやグループトークの際、どんな支援がほしいか聞いてみました。

・耳で聞いて覚えることができるから、何度もそのフレーズを聞いて、口に出す機会が欲しい
・ペアーワークの時に、先にペアの子にその部分を指で指してもらいながら読んでもらいたい。そうしたら、それを覚えられるから、自分も質問ができる
・あらかじめどこを話すのかがわかれば、家でCDを聞いて練習できる
・文を聞くときに、絵があればその雰囲気で理解できる
・カタカナだと通じないから読めるようになりたい

 多くの生徒たちは、「聞く」時間の確保し、同時に意味理解ができるとわかりやすい、ということです。ペアトークやグループトークのあるときには、事前にその文や単語を音声録音して家で聞いてもらう、ペアトーク時には、ペアの生徒に文を読んでもらえるような人選をする、などは可能でしょうか。また、視覚支援として絵を使って、文字に書かなくても意味がわかるようにしていくと生徒も楽かと思います。

 また、ある生徒は、「書かれている単語の丸暗記はできなかったから、全く授業についていけず、カタカナだと発音もちゃんとできなかったけれど、どの文字がどう読むのかをきちんと教えてもらって、自分である程度読めるようになると、ペアトークやグループトークにもついていけるようになった」と言っていました。

 カタカナはどうしても「日本語発音」になってしまい、余計に英語の音が聞き取れなくなってしまいます。カタカナを読んでいる生徒の中には自分が理解している英単語と先生やほかの生徒が発音する英単語が一致しなくなり混乱することもあります。カタカナを振ることを徐々にでも減らしていくことが必要になるでしょう。自分の力で読めるようになるために、文字と音の関係を指導することが必須ですが、時間がかかります。しかし、「急がば回れ」で、まずは基本の文字と音の関係を指導していくことも行ってみてはいかがでしょうか。



Q  「新学習指導要領では,『生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を 実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は 英語で行うことを基本とする。その際,生徒の理解の 程度に応じた英語を用いるようにすること。』と明記され,オールイングリッシュでの指導が求められています。

 しかし,実際に英語で授業を行うには,生徒の聞き取り能力の差があったり,文法などの説明があったりして難しいと感じており,日本語での説明,指示を行っています。オールイングリッシュでの指導に向けて,どのようなステップを踏んでいくべきでしょうか?

 また,英語の習得に困難のある生徒に対して,配慮していくことはあるでしょうか?」

中学校英語担当教員


A  回答者 大阪市立西中学校 教諭 三木さゆり 先生

 現行の指導要領で「授業は英語で行うことを基本とする」と規定された高校においても、現場での不安や質問を踏まえ、後に「授業のすべてを必ず英語で行わなければならないという意味ではない」と付け加えられ、現在は「英語による言語活動を行うことが授業の中心になっていれば、必要に応じて日本語を交えて授業を行うことも考えられる」と結論付けられています。なので、新学習指導要領で示されている「中学校においても授業は英語で行うことを基本とする」についても、「教師が授業中に話す英語をすべて英語にする(オールイングリッシュ)」とはどこにも書かれていませんし、高校に準じて柔軟にとらえてもよいと思います。英語で授業をすることが目的となってしまっては本末転倒です。大切なのは、授業の中で生徒たちが英語を使う場面をできるだけ多く確保していくことです。教師が話す英語もその中の一つと考えてはどうでしょうか。

 では、具体的にどんなことができるか考えてみましょう。

 「挨拶」「指示」「ほめ言葉」などのいわゆるクラスルームイングリッシュや、授業のルーティンに関する表現を英語で行っていくことは取り組みやすいので、取り入れている先生は多いと思います。次に授業の始めのスモールトークとして、ほんの数分でいいので英語で話してみましょう。最近のニュースや先生ご自身の休日や趣味の話など、生徒は興味をもって聞くはずです。たまには写真や映像などを見せながらのshow&tellも面白いですよね。後日生徒たちに取り組ませたいことをまずは見本のつもりで見せてあげて下さい。

 文型や文法の指導については、日本語で説明していたことを英語に置き換えるという発想ではなく、目標とする言語材料を生徒たちにとって身近な場面や文脈の中で提示することにより、生徒自身が文法規則や意味に気づくように展開する帰納的アプローチを取り入れてください。文法項目を英語で説明する必要はありません。もちろん、やりっぱなしではなく、まとめとして教師による補足説明で理解を確認することは必要ですが、ここの部分は日本語でもよいと思います。

 最後に教科書の学習の際にお勧めしたいのが、レッスンの導入としてのオーラルイントロダクションです。本文の内容を写真、絵、実物など視覚教材を示したりキーワードを確認したりしながら行うと生徒も理解しやすくなります。たっぷり英語を聞かせることもできますし、レッスンの背景の理解も深まる楽しい活動になります。

 どの活動においても、教師が一方的に英語を話すのではなく、生徒の様子をしっかり観察し、既習事項を使って生徒とのやり取りも取り入れながら、理解の程度を確認し、もう一度繰り返したり、他の言葉に置き換えたり、話す速さを調整したり、表情やジェスチャーを用いたりと工夫してみてください。このことが結果的には英語の理解に困難のある生徒への支援ともなります。

 英語の読み書きや、英文の理解に困難がある生徒であっても、一定の状況の中で「聞く」「話す」活動を楽しむ力や、お互いの考えや気持ちを伝え合う言語活動の中では発揮できる力を持っています。内容を十分に吟味すれば、簡単な英語を使ってのコミュニケーションは彼らにとってむしろ楽しい時間になるかもしれません。


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