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Q 小学校では,英語の困難性を知る,アセスメントなどはありません。子どもの英語の躓きを知る方法などはないでしょうか? 

小学校教員 20代 教職2年目


A    回答者 甲南女子大学人間科学部総合子ども学科 准教授 村上加代子 先生

そもそも小学校ではこれまで英語は教科ではありませんでした。そのため、一概に英語のつまずきといっても、何を基準につまずきと言えるのか、ということから始めなくてはなりません。指導要領では学習のゴールとなる姿は示されていますが、そこに到達しないことがつまずきかというとそれもまた違います。今後、英語が教科となることで、ある程度平均的な姿が明らかになっていくでしょう。たとえば何歳ごろにどの程度アルファベットの大文字が書けているのかという標準の値があれば、そこから大きく遅れている子どもを見つけることができるようになります。言い換えると、教科でもなく、年齢別の標準値もわからない現段階では「小学生の英語のつまずき」を正しく測定したり「遅れている」と断定したりすることは困難だということです。

ただし、小学校でも可能なことがあります。それは「つまずきの予測」です。特に読み書きは発達の段階がかなり明らかにされているほか、母語でのつまずきが外国語学習にも関係することが知られています。特に後者のつまずきは、英語を学習する以前から明らかになっていることが多いため、「英語学習時にこういうところでつまずくのではないか」とある程度予測を立てることができます。

たとえば書字の際に文字の形が崩れている場合、アルファベットでも同様に文字形が崩れる可能性は大きいでしょう。本人の努力や練習不足でないことがほとんどで、その原因としては目と手の協応の弱さや、視機能の弱さなどが考えられます。また、文字を思い出しにくい(漢字が覚えられない、偏や旁がバラバラになる)などの困難さがあれば、アルファベットの文字習得にも時間がかかるほか、文字の上下左右反転などの誤りが生じる可能性があります。さらに、小学1年生で特殊音節の読み書きに難しさを抱えていた場合、言語の音韻を捉えたり操作したりするスキルの弱さが関連していることがあります。これは英語圏のディスレクシアの最も大きな要因と考えられており、音韻性の処理の弱さがあれば、単語の読み書きといった基本的なスキルに大きな問題が生じる可能性が指摘されています。

このように、小学生を対象として英語の困難さを測定する正式なテストは日本にはありませんが、言語という領域であることを考えれば、「こうなるのではないか」と予測を立て、早めに指導対策を行うことは十分できるとも言えるでしょう。つまり、1年生、2年生のかな文字や漢字での読み書きの状態をしっかりと見ることが、現在のところ、英語の困難さの早期発見・早期対策に最も効果があると考えられます。



Q  書きに配慮のいる児童の場合,国語では,回答の聞き取り,代筆,理科や社会では,漢字をひらがなで書いても可能などの配慮や支援を行うことができます。英語学習において,アルファベットを読むこと(エイ,ビー など)ができるが,アルファベットを書くことが困難な児童の書字において,どのような支援,配慮が考えられるでしょうか?
小学校特別支援教育コーディネーター


A  回答者 松江市立意東小学校 教諭 井上賞子 先生

以下のように前提を考えて回答させていただきます。

・アルファベットの弁別はできている
・お手本を見ながらでも、形が取れなかったり「a」「d」といった似た形の書き分けができない
・場面は小学校の高学年であり、単語を記憶するという課題ではなく「見て書く」課題の場面での困難

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アルファベットを読むことができるということは、形の弁別はできているということだと推察します。書かれているものが「a」なのか「d」なのかはわかるけれど書き分けができず後から見て「何を書いたのかわからない」という状態ですね。

以下のような方法を試してみてはいかがでしょう?

  • 書きやすい用紙とお手本の書体を選ぶ

・4線ではなく2線の用紙からためしてみる、2線と3線の間に色をつけてみる、幅をかえてみるなどの工夫をしてみる
・お手本の書体を書きやすいUDの書体にする
・UDの書体でのなぞり書きをしてから見て書くことができるような用紙を用意する

  • 選んで組み合わせる

・アルファベットのシールやブロックを用意しておき、そこから正しいものを選んで組み合わせることで課題に取り組めるようにする(ブロックの場合はあらかじめ問題をタブレットに入れておけば、組み合わせたら写真にとって問題の上に配置しての提出もできる)

③ICT機器を使う

・キーボード入力を代替え手段として使う
・従来のキーボードだとキーが多すぎて混乱してしまう場合にはWordWizardのようにアルファベットだけが表示されたアプリも使うお子さんによって「書きやすくする」ことが必要なのか「別の手立てを持って書く活動に取り組む」ことが必要なのかが違ってくると思いますので、課外の時間に試してみたり本人とどのやり方がやりやすいか相談してみたりしながら取り組んでみられることをお勧めします。


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